増加している糖尿病罹患者数
2016年実施の国民健康・栄養調査の結果からは、HbA1c6.5%以上で糖尿病が強く疑われる人が国民全体の12.1%(男性の16.3%、女性の9.3%)にのぼり、日本国内の糖尿病人口は1000万人を超えているといわれており、2007年の推計の890万人からさらに増加しております。
糖尿病は、進行すると脳梗塞・心筋梗塞を起こすリスクが高く、失明や透析が必要になる腎疾患、壊疽や足の切断などにつながる合併症があり、初期症状がほとんどないため、サイレントキラーと呼ばれています。糖尿病についてきちんと知った上で適切な治療や生活習慣の改善を地道に続ければこうした重大な合併症を起こすことなく健康で快適な日々を過ごしていけます。 当院では、患者様が無理なく血糖値をコントロールして健康を維持できるよう、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた治療やアドバイスを行っています。最適な方法を一緒に考えていきましょう。
糖尿病の診断
健康診断で糖尿病であることが判明する機会が多くなっています。尿検査のみでは糖尿病の診断は難しく、初期の糖尿病や糖尿病発症リスクが高い境界型糖尿病を発見するためには血液検査が必要です。
血液検査で空腹時の血糖値が126mg/dl以上、あるいは食後の血糖値が200 mg/dl以上の場合には糖尿病の可能性が高く、典型的な糖尿病の症状を認めるか、再検査でも高血糖を認める場合、糖尿病と診断されます。経口ブドウ糖負荷試験によって境界型糖尿病や初期の糖尿病の診断ができます。境界型の場合でも、経口ブドウ糖負荷1時間後が180mg/dl以上であれば将来、糖尿病になる可能性が高いと言えます。境界型糖尿病では糖尿病同様に動脈硬化性疾患の発症リスクが上昇しますので、合併する肥満や高血圧・脂質異常症の管理を必要とします。
糖尿病の検査
高血糖が続くと、全身のたんぱく質が「糖化」という変化を受けます。また、インスリンが効きづらくなり過剰なインスリンが継続的に分泌される(高インスリン血症)と、血管合併症の主な原因です。
血糖値は食事内容やタイミング、運動などの影響を受けて絶えず変動していますから、1回の血糖値検査だけでは正確な診断ができません。そこで、血糖値の平均的な動きを調べるために行うのが、ヘモグロビンA1c(HbA1c)分析装置と血中グルコース測定装置を用いた検査です。この検査は、直前の食事などの影響を受けることなく過去1~2カ月の平均的な血糖の1回を調べることができます。 また、糖尿病の高血糖は血管にダメージを与え続けるため、合併症の有無を調べるために定期的な尿検査、眼底検査が不可欠です。
HbA1c分析装置
当院では、ヘモグロビンA1c測定には、基幹病院でも用いられるクラスのアークレイHA-8180を使用しています。この機器は測定法に信頼性の高いHPLCという方式を用いており、測定時間は1検体あたり48秒です。 複数の患者様の検査が重なっても迅速に結果を得られるため、結果が出るまでにお待たせする時間を大幅に短縮できます。
血中グルコース測定装置
グリコヘモグロビン分析装置(HbA1c)と併せて使用することにより、糖尿病のコントロール状況についてよく知ることができます。
糖尿病の治療
糖尿病はいくつかのタイプに分けることができますが、それぞれ治療法が異なります。代表的なタイプとして、1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病
インスリンは膵臓のβ細胞が作っていますが、この細胞が壊れてインスリンがほとんど出なくなって血糖値が高くなる疾患です。膵臓からインスリンがまったく出なくなるので、注射でインスリンを補う治療が必須となります。多くの場合、超速効型インスリンと持効型インスリンを組み合わせた、頻回注射法を行いきます。1型糖尿病では血糖コントロールが不安定になりやすく、自己血糖測定も並行して行う必要があります。
2型糖尿病
インスリンが出にくい(インスリン分泌不全)あるいは、効きにくい(インスリン抵抗性)ことが原因です。肥満、食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣が大きく関わっているため、食事療法と運動療法の再確認がとても重要です。
食事療法では、年齢、性別、身長、体重、身体活動量などをもとに1日のエネルギー量を決め、適切なカロリー摂取を行う必要があります。この時、カロリーだけにとらわれて必要な栄養素の不足につながらないようバランスのいいメニューを心がけます。食事療法は続けていくことが重要ですから、ストレスにならないように工夫することが必要です。
運動療法では、筋肉への血流が増えてブドウ糖が細胞に取り込まれること、そして筋肉が増えることでインスリンの効果が高くなり、血糖値が改善傾向に導かれます。運動を長く中断すると効果が失われてしまうため、少なくとも数日おきに続けることが重要です。運動は血圧や脂質に対してもよい効果をもたらしますし、健康寿命を延ばす効果も期待できます。運動療法を開始する前には、医師による循環器系チェックが必要です。ライフスタイルや体質、合併症などに合わせた運動療法メニューを医師と相談しながら作っていきましょう。 薬物療法では、作用の出方や効力などが異なるいくつもの内服薬や注射製剤などから、患者様の状態やライフスタイルに合わせたものを選択していきます。